のどかな素晴らしい春日和で、山桜を参会者たちで愛でた。
― ねがはくは花のしたにて春死なんそのきさらぎの望月の頃 ―
西行法師
これは、西行法師の「山家集」の花の歌群に入っている歌で、
生前、父が好んでいたものだ。
大の桜好きで、庭に松と桜を配し、春は縁側で
月がのぼるとよく眺めていた・・・。
海軍に配属していたときわずか父は20歳、ジャワ沖で爆撃に遭った。
ちょうど甲板に出ていたときだったらしい。
幸いというべきか、その甲板とともに海上に投げ出され、
数十名がその甲板の上に避難した。
数週間漂流し、サメや飢えと戦い生き延びた。
仲間がどんどん死んでいき、僅か四人がそのいかだに残った。
気が遠くなり始めたころ、通りかかった英国商船に助けられたらしい。
その話を聞かされるたびに、あのとき父が戦死していたら
父母の結婚もなく、もちろん今の私は存在しない・・・
子供ながらにかけがえのない「いのち」を戴けた不思議を思った。
その父が、願いどおりに『西行法師の命日』平成16年4月2日、
(旧暦二月十五日)に逝去した。
願望は成就する、不思議だ。
そして極めつけ、その夜は煌々と輝くすばらしい満月・・・。
告別式は山も山寺も境内もいちめんの桜・桜・桜・・・
空は真っ青に澄み渡り、参列の人々の感嘆の声があちらこちらに響いた。
父が私たちに残してくれた最高のプレゼント。
それは毎年、桜を観ながらみんなで父を偲ぶ会。
月 と 桜 と 絆。
お父さん、ほんとうにありがとう・・・。
大好きだった山桜
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